ある建物が、
ゼロになるまで。
南阿蘇ビジターセンター ネットZEB化改修
現代では新築するより、既存建物の改修によって長寿命化を図ることがはるかに多くなってきています。膨大な数の既存建物の脱炭素化の要請に対して現実的な最適解を得るためには、最小限度の改修と最大限の効果について一件ごとに見定めていくしかありません。
阿蘇のふもとに、一棟のビジターセンターが建っています。RCの屋根、壁。延床513平方メートル。建て替えの予定はなく、これからも使い続ける建物です。
改修前、この建物のエネルギーを計算しました。結果はBEI 0.70。国の基準より3割少ない、悪くない数字です。屋根には既に10.40kWの太陽光パネルも載っていました。それでも、使う量とつくる量のあいだには、まだ大きな差がありました。


ネットZEB化は、工事からではなく計算から始まります。空調、換気、照明、給湯。建物が使うエネルギーを一本ずつ数えて、どこにエネルギーが使われているのかを突き止めます。
この建物では、空調が0.84、照明が0.89。多くのエネルギーが空調と照明に使われていました。ここに手を入れれば省エネ効果が高い、ということです。改修のメニューは、ここで大きく決まることになります。
つくるより先に、減らす。順番を間違えると、大きな設備を載せるだけの高い改修になります。
窓は、サッシを替えずにガラスだけを真空ガラスに入れ替えました。既存の枠を活かせば、工事は小さく、断熱性能は大きく変わります。この外皮の断熱化が、冷暖房の負荷を根本から下げます。
照明はすべてLEDへ。照明のBEIは0.89から0.15まで下がりました。空調は「大きすぎた機器」を実際の使われ方に合った能力のものへ入れ替え。外皮の断熱化が効いて、空調BEIは0.84から0.60になりました。



減らしたうえで、使う分のエネルギーを自前でつくることができるようにします。屋根の太陽光パネルを10.40kWから17.25kWへ増設しました。屋根の四つの面に、向きと勾配を計算して載せ分けています。発電した電気を建物へ送るパワーコンディショナーも更新しました。


もう一度、計算します。
使う量と、つくる量が釣り合いました。設計一次エネルギー消費量は、正味でゼロ。建物は壊していません。姿もほとんど変わっていません。それでも中身は、ネットZEB(エネルギーを正味一切消費しない)の建物となることができます。


本建物は国有建物のため、ZEB認証の取得は行っていません。本記録の数値は、改修前後のエネルギー計算(BEI・創エネルギー量を含む設計値)による机上検討です。
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